人情
十代…私の思い出は松任谷由美さんの『春よ来い』という曲。
その曲が流れる頃に私は手術の為病院にいました。
窓からの景色を写生をしていることが多く
その姿を知った入院中の車椅子のおじいさんが
わざわざ部屋へ出向き『そんなに絵が好きならあげるよ』
そう言って手にしていた星野富弘さんの詩画集をくれました。
今でも大事な思い出。
絵はあれから ずっと私の生きる意味。
初めての二人展…自尊心を傷つけるような事を沢山言われました。
特に家族のことを持ち出して侮辱したり、女性への差別的発言。
あれは一生忘れませんし、絵描きの人権などありませんでした…
何かを伝えたい、訴えたい、表現したい、生まれ持った権利を
誰かが阻む事ではないと強く感じます。
その出来事が警戒心を深める理由となり
次の二人展の時は会期中出向くことを控えました。
それでも全てを控えることは当然難しいので
最終日近く勇気を出して出向きました。
そこで初めてマニィ・レザイさんと奥様にお逢いしました。
会話の中、自分が色々なことで自信を無くしていて
会期中に初めて自分の展示に訪れたのだと…
マニィさんがアドバイスをくれました。
『いろいろな人と会って自分の作品について話すことは
一番楽しい、大切なことですよ』
あの日…たくさんの勇気をもらいました。
初対面でまだこれからの絵描きにあったかい言葉くれる人情。
偽りのない対話、まっすぐな言葉、ずっと心に残っています。
今年の作品展、行けなかったことが心残りです。
上記掲載の作品は『夏の雲は忘れない』で懸命に活動され
作家としても書籍を出版されている
小島恒夫先生と奥様がお嫁にもらってくださいました。
『夏の雲は忘れない』の舞台成功の後
しばらくしてからお二人とお話する時間があり
人間味のある楽しい会話で私の緊張をほぐしてくれました。
作品を飾っていただいていることも励みですが、
まだまだこれからの絵描きで若輩者の私に
人情を持って平等に接して戴けることの有難さでいっぱいです。
夢狂さんがジョークいっぱいの会話を繰り広げる最中、
私の話す内容もそらさず丁寧に聞いて下さいました。
展示のご案内も時代の流れから出さないで模索する中、
『またご案内くださいね、見に行きますからね。』と
声をかけてくれたことや
夢狂さんのオブジェを作り手の気持ちを汲んで
伸びるように励ます姿勢、全て人情厚く響いてくるものがあります。
一度、二度でも伝わる何かが会話にはあって
伸びない時代に誠意を受けたこと
励まされた記憶は生涯消えはしません。
言葉だけでは人は誤魔化せないと感じるのは
全て人情から学んだ記憶のおかげです。
YukiTachibana