作品制作
朝晩の冷え込みも厳しくなり、
工房の柿もわずかに数える程度となり冬を感じています。
年末は毎年恒例の窯焚きで作品制作に集中する日々です。
じっと取り組んでいると時が経つのも忘れてのめり込んでしまいますが
制作テーマを織り込む中で様々な記憶もよぎり
やはり苦しい制作過程になります。
それでも出来上がる作品にはそれらを感じさせない
楽しさや喜びが誕生していくのが不思議なほどです。
作風が楽園のように感じる理由に言われた事…
『悩みなくいつも笑って楽しい人生なんだろうね。
あなたに悲しみとかわからないでしょ』
と、皮肉を込めた言い方もありましたが、
そんな人はおそらくいませんよね。
悲しみ、苦しみも糧にして生きていく強さをどこかで覚えながら
どん底からでも喜びや笑うことの大切さを
自然と学んでいるのかもしれません。
私には日本以外のお国から嫁がれた方との親戚が
熊本の本家に居ます。
納骨に伺った時に私の従姪が二人居ました。
あどけない表情の幼い姉妹。何処か不思議そうに私を見ていました。
幼い姉妹の姿は私と懐かしい姉との姿に重なり…
本家から亡き家族に対して言われた悲しい言葉も
胸にしまい過ごすことにしました。
お国が違うからと何処か悲しい言葉や態度を
受けることもあると察します。
子供心に受ける傷はいつまでも癒えないものもありますから
それらに負けず二人の従姪が微笑ましく幸せを見出してほしいと
陰ながら願っています。
私や姉は様々な問題を絶えず喜怒哀楽と共に分かち合ってきました。
それは他人が計り知れるものではありません。
だからこそ大切な存在だったと感じ、失ってからの日々は重い。
自分自身でクリアにしていける日は何年先かわからないけれど
作品と向き合っている時は不思議なほど
憎しみや悲しみより大切なものを見出せる。
そうやって作品と対話しながら
私の信念が真実として作品に織り込まれていくのだと感じます。
沢山の出来事がないがしろにされる中で
無力だとしたらあまりにも悲しすぎるから
自分が最低限出来ることを通じて伝えていく
それが私にとっての作品制作。
けれどもし与えるとするなら
作品から楽園を、喜びを…と願っています。
YukiTachibana